火燐追炎





宿の食堂で 4人が夕食を食べていると 同じような泊り客なのだろう

1人の男性が 2階から降りてきて 三蔵たちの隣のテーブルに着いた。

背は悟空よりも高いが 三蔵ほどではなく 物腰は優雅で品がある。

男には珍しく 長髪で 背中の中ほどまでもある髪を 後で1つに束ね髪色と同じ

黒い紐で くくっている。

鍛えているだろうに その体つきは 女性といってもいいほどに線が細い。

携えた剣は かなりの名刀なのだろう 飾りはないが 造りがいい事は見て取れる。

宿の娘が 顔を染めながら 配膳しているが、それを見ようともしなければ

愛想のひと言も言わず 娘の説明に黙って頷いているだけだ。 




娘が下がっていくと 静かに食事を始めた。

それを先ほどから 注意深く八戒が見ていた。

三蔵に何事かを言おうとした時、いつもの言い争いが 勃発した。

「ちょ・・・ちょっと悟浄、それ俺んだぞ。

勝手に皿からもって行くなよ!」

「こういうのは 早いもん勝ちなんだよ。

猿はそんなこともしらねぇのか?」

「知らなくたっていいんだよ。

それよりも返せよ! 俺楽しみにしてたんだぞ。」

低次元の争いを 当然のように始める2人に 

三蔵も八戒も心の中では ため息を吐きたいほどだったが、

どちらかが止めなければ 何時までも続くのも また何時ものことである。





そんな悟空の目の前に 食べ損なった品が並んだ皿が ついと差し出された。

その皿を差し出した者は 隣に座っていた 綺麗な顔の騎士。

悟空が皿を受け取ると そのまま自分のテーブルに戻っていく。

「姉ちゃん、これくれるの?

姉ちゃんは食べなくてもいいのか?」

悟空がそう呼びかけると その騎士は 驚いた顔をして 悟空を見た。

「驚いたなぁ、俺の事を ひと目で女だと言いきったのは お前が初めてだ。」

「あぁ、やっぱり女性の方でしたか。

僕もそうだと思っていたんですよ。

それよりも悟空に料理いただいていいんですか?」

八戒は 人の良さそうな顔で その女騎士に 尋ねた。

「あぁ、かまわねぇよ。

1人じゃ食べ切れねぇ位に 出されちまったからな。

手伝ってくれると助かる。」

そう言って テーブルに戻ろうと踵を返した。





「姉ちゃん、俺 悟空って言うんだ これありがとう。

姉ちゃんの名前は なんて言うんだ?」

悟空は 悟浄に皿を取られないようにしながら 女騎士に呼びかけた。

「俺は という。」

そっけなく答えると 振り向かずに椅子に腰掛けた。

綺麗な女と見れば 悟浄がほおって置くはずがない。

さっそくに立ち上がると の元へ行き 肩に手を回しながら口説こうとした。

は 素早く立ち上がると 自分の肩に触れそうになっていた腕をとって

ねじりあげ テーブルに悟浄の上半身を 押さえつけた。

「俺に触るな!

無断で触ろうなんざ 許せねぇんだよ。

お兄さんには 舐められたもんだ・・・・いい男だからって 

女がみんななびくとでも思ってるのか?」

悟浄を軽く抑えながら そう言い放った。





「いやいや、見事なもんですね。

さん、連れがたいそう失礼な事をして申し訳ありません。

美しい女性を見ると 病気のように口説く癖がありまして、

悟浄 お詫びを言って下さい。」

八戒のとりなしに ようやく開放された悟浄は 

腕をさすりながら「わりぃな。」と謝った。

それを黙って頷いて 受諾したは 椅子に戻ろうとした。





「おい、

俺には 挨拶もねぇのか?」

今まで 黙っていた三蔵が 旧知の知人のようにに話しかけた。

「知らん振りをしてぇのかとおもって わざと声かけなかったのに、

三蔵だって 挨拶ねぇじゃん。」

そんな2人を見て 驚く八戒・悟浄・悟空。

さんと三蔵 お知り合いですか?

良かったら ご一緒に食べませんか?」

すばやく立ち直った 八戒が 質問と誘いを投げかける。

その問いに 答えていいものかどうか は三蔵をうかがった。

三蔵は 目だけで に答えると 煙草をくわえて 火をつけた。





「じゃ 遠慮なく 相席させてもらおうかな。」

そう言うと 椅子をもって近寄ってきた。

八戒が 示したのは 自分と三蔵の間。

が三蔵と知り合いと知って 悟浄も悟空もそれに反対は唱えなかった。

「知り合いって程でもねぇけど 西安にいたときに 三蔵には借りがあるんだ。

揉め事起こしてたのを 助けてもらっちゃってさ。」 
 
八戒に向けて 先ほどの質問に答える。

悟空は のテーブルの料理を せっせと運んでは の前に置いていた。

「そういえば あの時の貸しを返してもらってねぇな。

今夜は どうせこの宿なのだろう。

俺に付き合え。」 三蔵は にそう言った。




「え〜っ、あの時の借りを今夜返すのかぁ。

だけど 随分待たせたからなぁ〜、仕方ねぇか。

じゃあ 今夜 三蔵の部屋に行くわ。」

料理をつつきながら がそう答える。

、あの時の約束は 守っていただろうな。」

「あぁ、ちゃんと守ってたさ。」

「なら いい。」

に約束させると 三蔵は 黙った。

「知り合いって程でもないわりには 随分と親しそうじゃないですか。

その約束って言うのは どんなものなんですか?」

八戒は 興味ありげに尋ねた。

「わりぃな、三蔵以外には 話す事ができねぇんだ。

っていうか 恥ずかしくて 話せねぇんだよなぁ〜、ごめん。」

綺麗な笑顔で そう言われてしまっては 八戒にもそれ以上の追求は出来なかった。




その夜。

三蔵の部屋を訪れたは 三蔵に招き入れられた。

ドアを閉めると 三蔵は 後ろからを抱きしめた。

「ここまでの道中 無事にこれたか?」耳元に唇を寄せて 尋ねる。

「んっ、大丈夫だったよ。

俺が そんなに弱くねぇ事 三蔵が一番しってんじゃん。

それに 三蔵たちの後を行くのは 妖怪がな〜んにもいないから 楽なもんさ。」

首にかかる三蔵の吐息を くすぐったそうにして は答える。

「しかし 悟空君だっけ 侮れねぇな、

俺のこと一発で女だと言いきる奴は 珍しいぞ、確か 三蔵も見抜いたよな。」

「あぁ、だからは俺のもんだ。

約束どおり この身体 誰に触らせないままに 父親の仇はとったんだな?」

三蔵は 確認するように の身体を抱きしめた。




「うん、ちゃんと守ったってさっきも言っただろう?

それに 仇をとったからこそ こうして三蔵の後を追って ここまで来たんだよ。

いまさらだよ、いまさら・・・・。」

三蔵の言葉には 怒ったように言い返した。

「そうか では明日から 俺と共に来い。

なら あいつらも文句はいわねぇだろう。

だが その前に を俺のものにする。」

そう言って 三蔵は をシーツに沈めた。 







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39000番 高丸様 キリリクで お相手は三蔵でした。
高丸様 キリ番申告とリクエスト ありがとうございました。

40000番も高丸様が 踏んでくださいました。
ありがとうございました。